阿岐本が言った。
「そちらにいらっしゃるのは、もしかして原磯さんですか?」
大木の向かいに座っている男が、怯えた顔を見せた。
「何ですか、あんたは……」
大木が言った。
「俺の知り合いだよ。心配はいらない」
「知り合いって……」
ヤクザじゃないのか。そう訊きたかったに違いない。
阿岐本はあくまでもにこやかに言う。
「大木さん、よろしければ、ご紹介いただけないでしょうか?」
「ああ、いいですよ。原磯さん、こちらは綾瀬の阿岐本さんです」
阿岐本は原磯に言った。
「よろしくお願いします」
絶妙のタイミングで、真吉が言った。
「アヤさん。ちょっと、カウンターのほうで飲もうか」
アヤは嬉々として席を立つ。