義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。
午後七時を過ぎた頃、真吉が言った。
「『梢』のアヤさんから電話がありました。原磯と神社の神主がいっしょに飲みに来たということです」
日村はそれを阿岐本に伝えた。
阿岐本が言った。
「おう。じゃあ、すぐに行ってみよう」
稔が車の準備をする。
阿岐本が真吉に言った。
「おめえも来な」
「はい」
出かけていく稔と真吉を、健一とテツがうらやましそうに見ている。事務所の留守番はつまらないのだ。
日村はその二人に声をかけた。
「俺たちの留守中、しっかり頼むぞ」