イラスト:小林マキ

昨日会ったばかりの人の名前を思い出せない。友達とのおしゃべりで何度も同じ話をしてしまう。いつもの場所に置いたはずのカギが見つからない――。こんなことが続いたら、脳の衰えのサインかもしれません。認知症を予防するための最新情報を紹介します(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

軽度認知障害(MCI)を見逃さないで

認知症は、一度発症すると完治が難しいため、予防が大切だといわれています。しかし、まわりの人が症状を疑い始めるころには、深刻な状況に進行しているケースが多いそう。

「だからこそ、本格的な認知症になる手前の段階で気づくことが大切。それが認知症予備軍ともいえる軽度認知障害(MCI)の段階です。MCIはいわば、最終防衛ライン。ここで対策を講じれば脳の機能を健康な状態に戻せる可能性が高まります。チェックリストであなたやまわりの人にその兆しがないか確認してみましょう」と話すのは、日本認知症予防学会代表理事の浦上克哉先生です。

MCIチェックリスト
●MCIチェックリスト
次の項目のうち、2つ以上該当すると、MCIが疑われます。
専門医を受診しましょう。

□ 同じ料理を続けてつくってしまう
□ 流行や季節感を考えた服装選びがおっくうになった
□ 話し始めてから、言おうとしたのか忘れてしまう
□ 洗濯をした後、干すのを忘れてしまうことがたびたびある
□ 小銭を出すのが面倒でお札ばかり出すことが増えた
□ 興味や喜びを感じる機会が減ってしまった

認知症の患者数は、2025年には約700万人になるといわれていますが、MCIに至ってはその倍の1500万人になると考えられる、と浦上先生。

「MCIが疑われる特徴的な変化は、やる気の喪失です。今まで当たり前にやっていたことを、おっくうになってやめてしまったりしたら危険信号といえます」(浦上先生。以下同)