戦争の影が濃い時ほど勢いがある
これはアメリカがもっとも豊かさを享受した時代のこと。この後は朝鮮戦争があり、マリリン・モンローが慰問にいって、アメリカ兵に熱狂的に迎えられた。ベトナム戦争やキューバ危機も起きた。現在もそうだが、戦争の影が濃い時ほどアメリカの映画界・エンタメ界には勢いがある。
アメリカのカルチャーとエンターテインメント界の才能が花咲く中、公職追放のまま残りの人生を過ごすオッペンハイマー。彼程、アメリカの光と影を色濃く受けた人物はいないだろう。彼の発明は多くの人の命を奪ったが、充分すぎる罰を受けたとも言える。
しかし、ダイナマイトを発明したノーベルはその名を冠した賞まで運営されているのとは大きな対比だ。其れだけ「原爆」と言うのは、ダイナマイトを遥かに越えた破壊力を持ったという事なのだ。
救いはオッペンハイマーの最晩年、まだ上院議員だったケネディによって、名誉回復がされたことだ。オッペンハイマーは受勲の2年後に喉頭がんで死去したが、彼の業績と人間性を正当に評価した人物がいたことは救いだ。しかしこのケネディも、大統領に就任して僅か2年数ヵ月で暗殺されている。
アメリカは果たして自由の国なのか、武器商人たちによって動かされる危険な国なのか。本作『オッペンハイマー』はアメリカの光と影を見事に描き出している。次期大統領選にも大きな影響を与えるだろう。
P.S.『オッペンハイマー』をみたあと、無性にJ.F.ケネディが気になり、オリバー・ストーンの『JFK』を見た。見事な映画で、抱き合わせで見ることをおすすめ。こういう映画を見て、日本の官界・政界も変わって欲しいです、マジで!