さかもとさんの『PERFECT DAYS』パンフレットから(写真・イラスト提供◎さかもとさん 以下すべて)
1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!(写真・イラスト◎筆者)

話題になりまくった『PERFECT DAYS』

『PERFECT DAYS』は見とかなくちゃ、と、映画館に向かう道すがら、駆け足で私を追い越した2人の男性がいた。

1人は40代くらいのサラリーマン風、もう1人はダウンの黒いジャンパーを着た初老の男性。案の定2人とも「パーフェクトデイズ」と切符を買い、映画館の暗がりに消えた。

役所広司がカンヌで最優秀男優賞を獲得したこともあり、話題になりまくった映画。館内はそこそこの観客、多彩な世代で埋まっていたので、ちょっと嬉しくなった。

正直地味な映画である。ヴィム・ヴェンダースという人は、ハリウッド的な映画作りに背を向けた「ミニ・シアターの監督」というイメージだし、「小津安二郎ファン」としても知られる。かといってその映画は眠ってしまうような難解さとは無縁だ。

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』や『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』のようなノンフィクションや、『緋文字』のような文学作品も十分にエンターテインメントにしたし、『ベルリン・天使の詩』は、熱狂的なファンに支持された。

しかし、『PERFECT DAYS』がこれだけの喝采で受け入れられるのはちょっと疑問であった。