歌手の今陽子さん(左)と医師の瀧靖之先生(右)(撮影:玉置順子〈t.cube〉)
今陽子さんは、「ピンキーとキラーズのボーカル」として一世を風靡し、現在も精力的にライブ活動を続けています。いつも元気なイメージの今さんですが、最近気になっているのは歌詞の覚えが悪くなってきたこと。これまで多くの人の脳MRI画像を解析してきた瀧靖之先生に、老化のメカニズムや若々しい脳を保つ秘訣を聞きました。(構成:村瀬素子 撮影:玉置順子〈t.cube〉)

ライブ中、頭が真っ白に

 15歳でデビューして60年近くが経ち、74歳になりました。記憶力が少し怪しくなってきたものの、まだまだ大好きな歌の仕事を続けたいですから、脳の健康にはとても興味があって。今日は先生にお会いできるのを、楽しみに来ました。

 こちらこそ。脳の老化というと、今さんのように記憶力の低下を思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、脳機能が衰えると、思考力や判断力、創造力、感情表現、感覚力、運動能力なども低下していきます。脳は、私たちの活動のすべてをコントロールしていると言っても過言ではないのです。

 全身の司令塔のような役割を果たしているんですね。

瀧 はい。一般的に、加齢とともに脳は少しずつ萎縮し、その部分の機能が落ちていきます。特に、新しい記憶を一時的に保存する「海馬」や、記憶や感情、行動を制御する「前頭前野」など、高次な認知機能を持つ部位ほど萎縮が進みやすいのです。

 私も若い頃は、英語のスタンダードジャズをすぐ覚えられましたし、今もライブで歌うとスッと歌詞が出てきます。でも、新しく覚えた歌は、ライブ中に突然歌詞が飛んでしまい、頭が真っ白になったことも……。