「これくらいいいか」は相手に伝わってしまう
工藤さんのお話は続きます。
工藤:「選手だけじゃなく、コーチや監督の私にも同じことが言えます。
本当は選手に指摘して修正すべきことがあるのに、『まあ、今日はいいか』と言葉を飲み込んでしまうことがあります。でも、一つ妥協すると、明日も『まあ、いいか』、明後日も『まあ、いいか』と妥協が続いてしまうのです。
コーチだって人の子ですから、指摘なんてしたくない。ギスギスするのは嫌ですからね。それに、コーチもかつては選手だったわけで、選手の気持ちもわかる。だから、つい妥協してしまうのですが、やはり、それをやってはいけないのです。
厳しいことを言うようですが、自分に妥協した途端、その選手は、それ以上、成長もしなくなります。だから、私たち指導者は、鬼だと思われても、常に言うべきことは言うし、やらせるべきことはやらせないといけないのだと思うんです。
人に偉そうなことを言う以上は、こちらも責任が生じますからね。『あなたはできているのか?』と言われるようではみっともない。こっちも必死にならざるを得ません。
でも、その気持ちが通じてくれれば、相手は聞く耳を持ってくれるのです。『あの人は真剣なんだから、自分も手は抜けない』と。真剣が真剣を生む。そうやって、お互いに磨かれていく。切磋琢磨ってそういうことだと思うんですよ」(以上、工藤さん)
※本稿は『活の入れ方』(幻冬舎)の一部を再編集したものです
『活の入れ方』(著:工藤公康・九重龍二・藤平信一/幻冬舎)
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