(写真提供:Photo AC)
どんな仕事もスポーツも勝って成果を上げるためには、妥協せず自分を追い込むほどの厳しさが欠かせません。一方でハラスメントを恐れるあまり、「ぶれなさ」「必死さ」を次の世代にうまく伝えられないリーダーが増えているのではないでしょうか。国内外の経営者が師事する「心身統一合氣道会」会長藤平信一氏のもとにも、指導者の悩みが多く寄せられています。厳しさとハラスメントの根本的な違いは何なのか?多くのリーダーを見てきた藤平氏が工藤公康さんらとの対話をもとに語ります。

100メートルダッシュ100本って意味ある?

今回はまず「優勝請負人」と呼ばれ、チームを何度も日本一に導いた名将・工藤公康さんからうかがった現役時代の話を紹介したいと思います。

工藤:「西武での練習は想像を絶するものでした。いまなら、それを見た人が『いじめだ、シゴキだ』と騒ぎ立て、SNSで炎上するかもしれませんね。当時、キャンプが始まる3週間前、1月10日はユニフォームを着て“球団主導の自主トレ”が行われていました。

100メートルダッシュ×100本。これがウォーミングアップです(笑)。終えると足が動きません。そこにコーチが優しい声をかけてくれます。

『よく頑張ったな。明日は半分の本数にしてやる』と。翌日、本当にその通りになります。

200メートルダッシュ×50本。たしかに本数は半分になりましたが、総距離は同じ。

っていうか、さらにきつい(笑)。ただし、これはウォーミングアップです。そこから全体練習を行い、投手はピッチング1時間、ランニング1時間、強化1時間を行います。クールダウンでもコーチはストップウォッチを持っており、タイムトライアルなんです。」