頭で考えるより前に、瞬時に動けるようになる

工藤さんのお話は続きます。

工藤:「当時は『何でこんなことをしなければいけないんだ』と、不平・不満を抱えながらやっていました。もちろん、文句を言ったところでどうにもなりませんから、耐えるしかない。ほぼ強制的にやらされていた練習です。

ただし、そのときにはわかりませんでしたが、後になって気づくのです。この練習こそが、その後の野球人生につながっていたのだ、と。

『活の入れ方』(著:工藤公康・九重龍二・藤平信一/幻冬舎)

この練習によって球が速くなったわけでも、変化球を会得できたわけでもありません。でも、プロとして生き残っていくための最も大切なことが身に付いているのです。

なにが身に付いたのか? ひと言で表すと“基礎”です。

ケガをしにくい体になった。反復練習に耐えられる体になった。そして、頭で考える前に瞬時に反応できる神経がつくられたのです。

これが『常勝西武』と言われた秘密です。広岡達朗監督は『管理野球』などと言われ、厳しいことで有名でしたが、それは事実の一側面をとらえただけです。広岡野球の根底には、徹底的な基礎づくり、土台づくりがあることを、私はこの身に刻んでいるのです」(以上、工藤氏)