数やりゃいいってもんじゃない

あらためて考えてみると、工藤さんも九重さんも、数字を伴った厳しさが、一つの基準になっていることが分かります。

ただし、「単に回数をこなせばいいってもんじゃない」ということも言っています。それは、工藤さんの師匠である、広岡達郎さんも同じです。

単に回数をこなせばいいわけではない(写真提供:Photo AC)

じつは広岡さんは長年、心身統一合氣道を学んでおられます。私の師匠(藤平光一)のときからですから、もうかれこれ60年以上になるでしょうか。91歳になった現在も、学び続けておられます。

つい先日も「少し歩きづらくなったけど、いまできることをやるんだ」と仰って、椅子に座り、スクワットを始めました。何回やられるんですか? と聞くと、「一日500回はやりたいね」と。驚きました。

工藤さんの話では、選手を厳しく鍛えたそうですが、ご自身にも厳しい、というか妥協がないのですね。

工藤さんは、この“妥協しない”姿勢について、次のように話してくれました。

工藤:「お前ら、ただやってるだけじゃダメなんだよって、監督(広岡さん)は言うんですね。でも、若かった私たちは、どうしていいかわからない。“一生懸命にやってます”ってフリをしても意味ないですからね。だから黙ってたら、監督がこう言うんです。

『ファーストベースにカバーに行くのに、目をつぶって全力で走り、ベースを踏めなきゃダメだ』って。