緊迫した場面でミスしないために

「そんなのムリって思いましたね。だって、投手と内野手の連係プレーって、私たちは小学校からずっとやってきてますから。目をつぶってなんてできるわけがない、と思うわけです。

すると、監督が言うんです。『工藤、お前いま、できるわけないって思っただろ? そうやって、頭の中で、できないって思っているうちはできないよ』と。

で、とにかく毎日、ベースを見ないようにしてカバーに入る練習をする。『たぶんこの辺だろう』と言いながら失敗して、『じゃあこの辺か?』と失敗して。でも、何日も何日もくり返しているうちに距離感がつかめてきて、『あ、この辺だ』と思ってポンと踏んだらベースがあるんですよ。不思議とできるようになるんですね。

それで気づくんです。頭で理解しているうちは、まだまだなんだ。体で覚えることが、プロとしての技術を身に付けることになるんだ、と。それには、単に回数をやるのではなく、考えながら、感覚を研ぎ澄ませながらやる必要がある。

あと、やっぱり『できない』って思ったら、できないんですよ。監督は、それを無言のムチャぶりの中で教えてくれたんです。こうやって、技術が体の中に入ると、緊迫した場面でも、ミスが出なくなるんです」(以上、工藤氏)

※本稿は『活の入れ方』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。


活の入れ方』(著:工藤公康・九重龍二・藤平信一/幻冬舎)

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