「冊子つくり」のエピソード

さらに、『源氏物語』のなかにも、東宮入内を控えた明石の姫君の婚礼支度として、光源氏が「冊子つくり」を命じる場面が出てきます。(巻32「梅枝」)おそらく、自身の実体験も踏まえて、紫式部がこのエピソードを入れたのでしょう。

昨年、私が京都・西本願寺の近くにある「風俗博物館」を訪れたときは、『源氏物語』に関する展示のなかで、この「冊子つくり」の場面が、4分の1の大きさの人形で再現されていました。

同博物館では、平安時代の文化や貴族の生活が人形や模型を使って立体展示されているのですが、人形が身に着けている装束はもちろん、建築物や調度品も驚くほど精巧につくり込まれていて見応えがあります。

展示されるテーマは時期によって変わるため、「冊子つくり」の場面が常時見られるわけではないものの、『源氏物語』の世界を体感するにはうってつけの施設。

当時の装束や王朝文化に興味がある人なら、時間を忘れて見入ってしまうこと請け合いです。(2024年8月24日までの展示テーマは「源氏物語からみる平安貴族の現世と来世への祈り」)