なぜ学びを活かせなかったのか

さて、あなたは気づいたでしょうか? 実は、先ほどの要塞問題とこの問題の解決法は、同じ構造を持っています。

それは、「四方八方から送った小さな力を集結させて大きくし、標的をアタックする」という構造です。

アメリカの大学生を対象に行った実験では、まず「要塞問題とその答」をセットにして呈示した後、放射線問題を出して解決法を考えてもらいました*1。

その際、この要塞問題が放射線問題の解決に関係があるというヒントを与えた場合には、約80パーセントの学生が正しく答えました。これはかなり高い正答率ではありますが、明らかなヒントがあったにもかかわらず、100パーセントには届かなかったのです。

 

『メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる』(著:三宮真智子/中央公論新社)

一方、ヒントを出さずに、「要塞問題とその答」を示した後に放射線問題を考えてもらうと、正答できたのは40パーセント程度にしかなりませんでした。

放射線問題だけを単独で出した場合の正答率は、たったの10パーセントでしたから、さすがに、直前に見た要塞問題とこの問題が同型であることに気づいた学生たちがいて、正答率が上がったのでしょう。

それにしても、この結果は、約60パーセントの学生が、二つの問題の同型性に気づかなかったということを示しています。せっかく直前に学んでいながら、なぜ、その学びを活かせなかったのでしょうか。