ガバガイ問題
この問題について考えるために、次のような状況を想像してみてください。
あなたは言語学者で、今まで知られていなかった言語の辞書を作ろうとしています。そのために、その言語を話す協力者と行動をともにし、彼が出した音声とその意味を書き留めていきます。
今その協力者が、草むらから飛び出してきた白いウサギを指さして「ガバガイ」と言いました。
ここで、あなたなら、このガバガイの意味として、どのようなことを書き留めるでしょうか。「ウサギのこと」でしょうか。それとも、「動物のこと」ですか。あるいは、「この村でみんなに可愛がられている、このウサギの名前(固有名詞)」とか? それとも「白くてふわふわしている」?
こうして考えてみると、何かを指さして単語を言うというだけでは、単語の意味を伝えるには十分でないことがよくわかります。意味の候補は、このようにいくらでも出てきてしまうからです。どれが本当の意味なのかは、なかなか決められません。
この問題を指摘したのは、アメリカの哲学者クワイン*1です。
「モノを示して単語が言われただけでは、その意味は定まらない」というこの問題は、彼が示したこの例話にもとづいて、ガバガイ問題と呼ばれたりもします。単語を学び始めたばかりの子どもも、まさにこのガバガイ問題に直面していると考えられるのです。