自分の周りに起こることに対して無関心で良いのか?

額装だけでなく楽しめる花火たち

それらは誰もが「これが花火の写真か?」と驚いたというが、本人が観覧者に解説することで、花火の深い歴史を理解する一助となったという。

As it flowsは「貴方は今のままでいいですか?」という問いかけになっており、今回のindifferenceは「自分の周りに起こることに対して無関心で良いのか?」という問いかけだ。これらの根底には常に「不条理」というテーマがあるそうで、幼少期の出来事が背景にあった。

6歳のとき両親が離婚し、2歳年下の妹は母に、本人は男同士という意味合いか父親に引き取られ、兄妹がバラバラになった。

妹の小さな手を取り玄関から出てゆく母親に縋り付こうとしたところ、父親から引き裂かれ、暴れて泣きじゃくるのを抱き上げられて、2階に連れて行かれた。その時の情景が今でも瞼の裏に焼き付いているという。それが原因かはわからないが、友達から「性格が少し歪んでいるのでは」と思われてしまうことも多かった。何かあるごとに、世の中の不条理な出来事に対して反発してしまう自分がいることを強く認識しているそうだ。

この不条理シリーズ第二弾とも言えるindifferenceは、いろんな人の視点を意識して作られている。

花火を指定席、いわゆる正面から見る人(積極的に社会の出来事に対して対峙する)、建物の中にいてたまたま窓越しから偶然に見えた人、敢えて見ない様にしている人(問題に関わり合いたくない)、見ようとしたが上手く全体を見ることができなかった人…。それぞれの人の生き方など、社会に対してのスタンスを写真を通して表現しているのだ。

半径5メートル以内には関心を示さない、といわれる現代の若者達、アナログからデジタルに変化した社会構造が関係しているのだろうか。

「尺玉の花火が、たとえ煙で遮られても風が吹けば鮮明になる――自然は今のところデジタルでは操作できないということを、この展覧会を見て感じてほしい」冴木は語った。

★冴木一馬写真展「「indifference」は、5月28日(火)~6月9日(日)まで、
京都写真美術館 ギャラリージャパネスク で開催予定
11:00-18:00
〒605-0038京都府京都市東山区堀池町374-2
TEL 080-5988-7720