『わたしのかあさん』では、反発する高子(落井実結子さん)の心を母・清子(寺島しのぶさん)の愛情が癒していく(写真提供◎現代ぷろだくしょん)

3月から公開された新作『わたしのかあさん―天使の詩―』の構想は、前作の上映中から進んでいました。

知的障がいのある私の長女がお世話になった、東京教育大学附属大塚養護学校(現・筑波大学附属特別支援学校)の菊地澄子先生の書いた本が原作。障がいのある両親のもとに生まれた健常者の娘が、葛藤を乗り越えて成長する様子が描かれています。

両親の役は、寺島しのぶさんと渡辺いっけいさんが演じてくれました。知的障がいのある難しい役なのに、ふたりとも本当にうまいんだよね。

私、前作の上映会でお客さんに聞いたんだもん。「寺島さんが演じる知的障がい者のお母さん、見たい人」と聞いたら、どの会場でもぶわ~っと手があがるのよ。実際、やさしくて、きれいな心のお母さん役がぴったりでした。

常盤貴子さんも、私の作品に何度も出てくれるね。仲がいいんだ。原作にはない、成長して障害者施設の園長になった娘の役をやってもらいました。幼少期を演じた落井実結子ちゃんも、いい演技をしています。

ほかにも船越英一郎さんや高島礼子さんをはじめ、一流の人が大勢かけつけてくれて、すっかり豪華キャストになっちゃった。キャスト表を見ながら常盤さんと「福祉映画もここまできたねえ」って。船越さんはクランクアップ後、「こういう映画なら僕出ますから、また誘って」と言ってくれました。

嬉しいし、ありがたいことです。なにせ貧乏所帯だからロケにもお金をかけられない。事務所が入っているこの古いマンション、別の階に私は住んでるんだけど、たまたま空き部屋が出たんです。そこを一家が暮らす公団住宅という設定で借りました。

当初、「ドアが公団風じゃない」とプロデューサーの次女が言うので、「じゃあ、お金持ってきてよ」って言ってやりましたよ(笑)。皆さんの楽屋は、私の部屋。わいわい楽しく撮影しました。ぜひ観てください。