子どもを手放せ、という誘い
これまで映画で取り上げてきたテーマは、社会福祉、女性の地位向上、戦争……と一貫していると思います。どれも私自身が当事者だからなんだよね。
戦争は、なにより嫌いです。私が生まれたのは1932年。五・一五事件が起こった年で、日本が軍国主義に突き進んでいた時代でした。
やがて第二次世界大戦が勃発。私は東京生まれで、下町が壊滅的な被害を受けた45年3月10日の東京大空襲は免れたものの、5月24、25日の山手大空襲でやられました。
東京大空襲では約300機のB29が焼夷弾を落としたけど、山手大空襲では各日450機以上が飛んでたの。空襲警報が鳴って夜の町を逃げながら空を見上げると、あんなにたくさんの飛行機同士がよくぶつからないなあと思うくらいだった。
次の瞬間、焼夷弾がバラバラと落ちてきて、あたり一面にぶわ~っと一斉に火がついて真っ赤になった。半分焦げた死体やら、火ぶくれだらけで歩いている人やらで、あの光景を描けと言われたら描けるくらい。忘れたくても、忘れられないですよ。今でも打ち上げ花火は、怖くて泣いちゃう。