(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第71回は「自然が与えてくれる力」のお話です。
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)

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新幹線に飛び乗って

新潟県の長岡市と小千谷市の境の山間地に、法末(ほうすえ)という集落があります。棚田が広がるのどかな里山です。訪れたのは今から7年程前。テレビの番組で、カメラで写真を撮りながら集落を旅するというものでした。

スマホの中にその時の1枚の写真を見つけ、法末のことを思い出しました。傘を被ったおじいさんと私の後姿。人生で大切なことを、この集落とおじいさんに教えてもらった旅でした。その日私は銀座で舞台に立っていました。

終演後ダッシュで楽屋を飛び出し、新潟行きの新幹線に飛び乗りました。
日本のど真ん中から山奥の集落へ。

クタクタで乗り込んだ新幹線。
道中私のスマホは「圏外」になりました。
お世話になった方や観に来てくださった方に舞台のお礼なども送れないまま、その日から3日間私は音信不通となりました。

銀座から一変して田舎ののどかな景色。
コンビニやスーパーどころか、家も街灯も信号も見当たりません。
泊まるのは廃校になった小さな小学校の、かつては教室だったであろう広い部屋です。
タイムスリップしたような不思議な感覚になりましたが、田舎育ちの私にはどこか懐かしく落ち着ける空気がありました。

そして、法末の皆さんはとても温かく迎えてくれました。

緑豊かな棚田の風景