さまざまな弊害を生む骨盤の後傾

私が患者さんの治療をするときには、まず姿勢と骨格をチェックします。そのときに大きな役割を果たすのが骨盤です。

骨盤は、脊柱(せきちゅう)(背骨)と大腿骨(だいたいこつ)(太ももの骨)の間で体を支えている骨の解剖学的名称で、左右一対の寛骨(かんこつ)と仙骨(せんこつ)・尾骨(びこつ)で構成され、上半身と下半身をつなぐ働きをしています。

本来、骨盤は垂直に立っているものですが、さまざまな要因により、現代人の骨盤は前後に傾いていることがほとんどです。そのなかでも、とくに顕著(けんちょ)なのが、骨盤が後傾している人が実に多いことです。

現代人の骨盤が後傾する最大の原因は、運動不足とスマホに依存した生活です。交通網が発達し、IT環境が整った現代社会において、人が体を動かす機会は激減しました。こうした極端な運動不足の状態に、拍車をかけるように体に悪影響を及ぼしているのが、スマホの存在です。

全身の筋力が衰えた状態で、スマホを操作するために前かがみの姿勢をとり続けていると、頭が前方に傾いて肩が内側に入り込む「巻き肩」になります。

すると、背中が徐々に丸まってネコ背になります。ネコ背になると、筋力不足により固く萎縮(いしゅく)した大臀筋(だいでんきん)(お尻の筋肉)やハムストリングス(太ももの裏側の筋肉群)に引っぱられて、骨盤が後傾するのです。

骨盤が後傾すると、ひざを真っすぐに伸ばしきることができず、全身のバランスをとるために、無意識のうちに下腹を突き出すようになり、いわゆる「ポッコリおなか」にもなってしまいます。