「なにがなくても石があれば良い」月刊『愛石』(以下写真:『婦人公論.jp』編集部)

出版不況が言われて久しいですが、特に苦境に立たされているのが「雑誌」です。2020年だけで100誌以上が休刊。書店の数が減り、近年では物流問題も加わるなど、環境は厳しさを増すばかり…。そんななかでも何十年も刊行を続ける「老舗雑誌」の強さのヒミツとは? 今回、石を愛でる人達を読者に創刊42年を迎えた『愛石』の立畑健児編集長にお話をうかがいました。(全2回の1回目/後編に続く)

そもそも『愛石』とは

――『愛石』について、あらためてご説明いただけますでしょうか?

雑誌そのものは、昭和58年8月に月刊『愛石の友』として始まりました。

お話をうかがった立畑編集長。2代目編集長となった21年前から、編集も販売もほぼお一人で手掛けていらっしゃいます(写真:『婦人公論.jp』編集部)

 

私は2代目の編集長ですが、引き継いだ21年前から、編集も販売もほぼ一人で手掛けています。

そのため、返本などに対応できなくなった事情もあり、10年ほど前から書店売りを辞めて、年間購読者へ直接配送する形で刊行を続けてきました。ですので、マンションのこの部屋に入ってすぐお気づきになったと思いますが、玄関に雑誌が山積み。(笑)

紙面で扱っているのは「水石(すいせき)」と呼ばれる石の鑑賞文化です。

石を専用の台や、水盤に砂を敷いた上に据えて鑑賞する。石は基本的に加工していない自然石を対象として、山や滝などの景色、あるいは人に見立てたり。あるいは何にも例えず、抽象的に観賞して楽しんだり。

編集部の棚には見事な水石がズラリ(写真:『婦人公論.jp』編集部)

 

なので自然の物ではあるけれど、とても芸術性が高い。それでいて気軽に楽しめるし、幅広い人向けの趣味だと思っているのだけど…。