「なにがなくても石があれば良い」月刊『愛石』(以下写真:『婦人公論.jp』編集部)

出版不況が言われて久しいですが、特に苦境に立たされているのが「雑誌」です。2020年だけで100誌以上が休刊。書店の数が減り、近年では物流問題も加わるなど、環境は厳しさを増すばかり…。そんななかでも何十年も刊行を続ける「老舗雑誌」の強さのヒミツとは? 今回、石を愛でる人達を読者に創刊42年を迎えた『愛石』の立畑健児編集長にお話をうかがいました。(全2回の2回目)

なぜ『愛石』は刊行を続けられているのか

――創刊から40年余りを経た今、『愛石』の刊行状況はいかがでしょうか。

そもそもこの雑誌は昭和40年前後に<石ブーム>が起きた時期からしばらく経った、昭和58年8月に月刊『愛石の友』として誕生しました。

それを21年前に私が2代目編集長として引き継いだ際、『愛石』にタイトルを変え、同時にB5版からA4版のオールカラー仕様へリニューアルしています。

創刊時の部数は3、4000部あったそうですが、現在は定期購読者のみに販売していて、公称1000部。一冊1600円です。

ただし一冊作るのにコストが900円以上かかっているので…その意味での利益はほとんどありません。(笑)

立畑編集長。このデスクから『愛石』は生み出されています(写真:『婦人公論.jp』編集部)

ちなみに同じ「水石(すいせき)」趣味を扱う『樹石』という雑誌もありましたが、数年前に休刊しています。

――趣味にしている人が減り続ける状況である以上、媒体を継続するのもなかなか厳しいと…。失礼ながら、なぜ今も刊行を続けることができているのでしょうか?

収益としては、愛石家によって全国各地で開催されている展示会がカギになっていて。その開催情報を有料で載せる「掲載料」が運営の一助になっています。

展示会は今も年間400ほど全国で開催されています。でも、それを定期的に伝える媒体はこの雑誌しかない。現実として、愛石家にとって貴重な情報源になっているのだと思います。