加賀 パリの生活を楽しんでいると、浅利慶太さんから電話がかかってきて、日生劇場の舞台『オンディーヌ』に出ないかと。姉に言ったら、「あんたみたいなチンピラにできるような役じゃない」って。その言い方にむかついて、やってダメなら職業を変えられると思った。
で、日本に帰ったの。なんと大当たり。日生劇場、始まって以来の。3歩歩いて4つ勘定したら振り返る(笑)、とか演出家の言うままにってただけで、自分で考えてなかったね。つまり単なる被写体だった。それが、急に女優志願になっちゃった。
内田 何が心を動かしたんですか?
加賀 最後の台詞を私が言うと同時に幕が下りるんだけど、幕が下りるか下りないかで、うわーって喝采がくるのよ。これはやめられない(笑)。そこから私、演技を学ぶの。台詞や発声の練習、パントマイム、ダンスと。で、女優になることを本気で決心した。
内田 意志を感じますね。
加賀 『オンディーヌ』は自分をすり減らす自己犠牲の愛の話だから、私、そうなっちゃって、惚れる相手も間違った。(笑)