内田 私は20代の時に女優を一度休業して、30歳で復帰。その時にまりこさんと再会して、「女優をやるのなら若いわけじゃないから、誰もちやほやしてくれない。悪女でも何でもやりなさい。その覚悟はあるのね」って言われて。生半可な気持ちではできないと思いました。

加賀 私ははっきり言った。

内田 目が覚めました。30歳まで気づけなかった。芝居に対して準備する大切さも。大河ドラマ『軍師官兵衛』への出演が決まった時、衣装さんに電話してくださいましたね。

加賀 「あの子、細いから肉襦袢も紐も用意して」って。

内田 放送が始まって、まりこさんに「まだまだだけど、ま、頑張ってんじゃない」って言われたのが、終わる頃には、「板についてきた」と。うれしかった。「プロならば理解を深めて動きも考えて、腹にそれを入れてやる。着ること、歩くこと、所作、当たり前のことができるように」とも教えてもらって。

加賀 あの当時、普段、着物を着て生活してるわけだからね。

内田 時代劇に限らず、役に失礼のないように演じることも教えてもらいました。私が変わったきっかけのひとつは、まりこさん。芝居を「よかったよ」と言ってもらえる時は、私も噓がなくできたと思った時。「相手とのタイミングがうまくいってないね」と言われることもある。まりこさんには全部バレてる。

加賀 すぐわかるね。芝居はそこにいることが大事だから。

内田 最近、演じることがとても楽しいんです。まりこさんから「松田優作さんとのお芝居で、『カットかけないで』っていうぐらい気持ちが入っていた」と聞いて、私もその境地に達したいと思って目指しています。