一抹の寂しさが

バンコクのスワンナプーム空港内から全ての喫煙所がなくなった。空港の外に行けば、今でも吸える場所は設置されているのだが、空港の施設内の喫煙所は完全になくなったのだ。

このスワンナプーム空港の喫煙所に直接つながるような記憶があるわけではないが、旅の終わりの場所としての空港から喫煙所が消えてしまったことに一抹の寂しさがあったのだ。

(写真:丸山ゴンザレス)

タイのスワンナプーム空港ができる前、バンコクのメイン空港はドンムアン空港だった。喫煙所がいくつかあったのを覚えているが、もっと記憶に残っているのは、そこが最後の再会の場所になっていたことだ。

東南アジアをあちこち旅して、最後にバンコクに戻ってくる旅人が多かった。日本から往復チケット(オープンかフィックスかなど、当時はいろんな買い方をしていた)がお手頃だったこともあったのだろう。

旅行者の聖地となっていたカオサン通りに宿をとって同年代の旅人たちと交流する。やがてそれぞれのスケジュールで帰国していく。学生時代の帰国便はノースウェストかエアインディアが定番。安い便を選ぶとフライト時間は決まって深夜か早朝になった。

お金を節約するためにバスで空港まで移動するため、どうしても数時間を空港で過ごすことになる。バーガーキングかマクドナルドで軽い食事ぐらいはとることもあるが、そもそもお金がないので自然と喫煙所に行くことになる。

そこには、宿や旅先で別れたはずの連中がいたりする。それは帰りの飛行機の選択、大学の授業開始のタイミングなどから決して低くない確率だったりするのだ。