喫煙者にとって失われゆく風景が増えている

南アフリカに行く途中に立ち寄ったドバイの空港で、係員に「喫煙所どこ?」と泣きついて、結局、空港職員が秘密で吸ってる店の裏に連れて行ってもらったことがある。

アメリカの中でも特に巨大なダラス空港では、喫煙所が見つからなくて、いよいよトイレで吸おうと思って入ったら、すでに先客の何人かが吸っていて空港職員に怒られている現場に遭遇。大人しく退散することもあった。

『タバコの煙、旅の記憶』(著:丸山ゴンザレス/産業編集センター)

30代、40代と年を重ねると体は刺激をそれほど強く求めなくなった。おかげで10時間以上のフライトの後で、イミグレーションを通過して空港の外に出てからの一服の良さを楽しむことができる程には成長できた。

むしろ老化とでも言えるかもしれないが、ともかく今はルールの範囲内で喫煙をするように体が慣れてきているのだ。

喫煙者にとって失われゆく風景が増えている。そこに旅人の視点を加えると、さらにはっきりとした形で喪失を実感する。