こんな幸運の波、乗る以外の選択肢などありはしない
パリの中心部から探索を続けていると、数ヶ月前にYouTubeでチェックしたアメリカ人がパリの地下に潜った時の映像と同じような場所を見つけた。
「ここかも!」と口には出さないが、記憶を頼りに歩いていったところ横穴を発見できたのだ。しかも、そこにはこれから地下に潜ろうというカタフィールの若者が二人現れたのだ。
こんな幸運の波、乗る以外の選択肢などありはしない。
二人も日本から取材に来たことを伝えると快く案内役を買って出てくれたのには感謝しかないはずなのに、そんな殊勝な気持ちも長くは続かなかった。入り口の狭さと通路の天井の低さから体を折りたたんで歩くのだが、体力が想像以上に奪われる。
若者二人は関係ないとばかりにずんずん進んでいく。
彼らはプロのガイドではない。俺のことを見捨てても誰に咎められることもないのだ。一方でこちらは置いていかれたら終わりと思って必死で食らいついた。
途中何度も頭を天井にぶつけた。被っていたキャップの天ボタンがズタズタに裂けるほどの衝撃で頭皮にも血が滲むほどだった。
地下空間を歩き始めて2時間が過ぎたぐらいで、ようやく目的の場所に到着した。そこは葛飾北斎の富嶽三十六景をモチーフにした見事なグラフィティのある場所だった。通称ビーチ。
ここに来たかった。参考資料を漁っている時に釘付けになったアート作品である。