判断は人それぞれで……

そのほかにも「一杯、どうぞ」についてこんな話を聞いた。

「私も奢らない派。以前、いつも行っている居酒屋で常連客に飲まされて、ベロンベロンに酔っているスタッフを見て引いちゃって……。私だけではなく、その日の一見さんもドン引きしていました。たった数杯のお酒のせいで、今後の太客になってくれるかもしれない人を失うなんてサービス業としてはあり得ない」

そう話した友人は、元飲食店で働いていた経験がある。酒を飲ませる仕事といえば、ホステスやキャバ嬢たちもそうだ。でも彼女たちは同席をして、客に気持ち良く飲ませることが専門であって、居酒屋とは一杯の値段が違う。飲み干さずとも、ごちそうになったことが仕事になる。

居酒屋では一杯数百円ならいいじゃないか、と言う意見も飛びそうだけど、それが嵩むと結構な金額になる。そして奢りが積み上がった頃には、たった一人かもしれないが客の信頼を失墜する……と、考え始めたら面倒になったので、私は「一杯どうぞ」からあっさり手を引いた。それはやりたい人だけやればいい行為で、もちろん否定も肯定も一切しない。

でも今回のエッセイでは繰り返すようだが、木戸大聖くんみたいな見た目のスタッフだった場合は話が別だ。その時は客の中でも我先にと、率先して飲ませる準備はできている。

(写真はイメージ。写真提供:photoAC)