本気で描いたものには不思議なパワーが

漫画以外の活動も積極的に行う。日本・韓国・台湾・香港・中国の漫画家の交流の場としてアジア「MANGAサミット」を主催。若手育成のために大学で教鞭をとる一方、2018年には日本漫画家協会理事長に就任した。

――いつの時代も大切にしてほしいのは、作者の権利、著作権を守ること。若い人たちが、出版社や二次使用をする企業と不利な契約を交わさせられたり、表現の自由を脅かされたりする時には、できるだけ力になりたいのです。その分野に強い弁護士を紹介する、裁判費用を負担するなどしています。

だって世の中には素晴らしい作品がたくさんあるんですよ。なぜこんな世界が描けるのだろうと感心する作品に出会うたび、どうか作者が元気で描き続けられますように……と祈っています。

だからもしその人が筆を折るような事態に陥ったら、すぐにお節介を発動。連絡を取って、サポートをしたりしています。実際、「やり直す気になりました」という人もいて。

ライフワークとして力を入れているのが、「MANGAサミット」など、アジア地域との文化交流です。今まで稼いだお金をつぎ込んでいます。さまざまな国の漫画家たちが感性を共有することで、得られるものは多いので、続けていきたい。他国の表現の自由に関する討論会にものこのこ出ていくから、「漫画界のジャンヌ・ダルク」と呼ばれているみたい。(笑)

故郷にある大阪芸術大学で教えて、今年で21年目になります。教える相手は自分の作品で世に出たい子たちですから、実技が授業のメインです。作品の構成やネーム(セリフの入った下書き)をチェックして、アドバイスをしています。

漫画はどんどん進化しているので、最新のデジタル技術や、韓国で生まれた縦スクロールの漫画の描き方なども授業に取り入れて。今まで教え子からデビューしたのは40人以上。あちこちの雑誌で活躍していて嬉しい限りです。

学生たちの保護者やファンの方々と話すと、「自分も漫画家になりたかったんですよ」とよく言われます。なぜ諦めるのでしょう?

ある程度の年齢になってから、人生経験を活かした作品を描くこともできます。今からでも遅くありません。作者が本気で描きたいものは、きっと読者に受けます。なぜか絵の上手さを超えた、不思議なパワーがあるんですよ。

私自身、この先年齢を重ねた時に、自分が何を描くかということに興味があります。まだまだ読みたい、知りたいこともいっぱい。困ったな、人生100年時代と言われても全然足りませんよ。