時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは愛知県の70代の方からのお便り。他県の大学へ入学した息子は、留年を繰り返し7年もかけて卒業。勉強したいことがあったわけではない、と息子に言われ――。
何がしたいの?
大学の授業料が高くなっていると聞く。受験料や入学金も同様だろう。若い頃、私は4年制の大学に行きたかった。
しかし父親が亡くなった時、妹たちはまだ中学生と小学生。母は着物を仕立てる内職をしていたが、コンスタントに注文があるわけではなく、収入は微々たるものだった。
だから私は夜間の短大に進み、昼間は常勤のアルバイトをして家にお金を入れながら卒業した。
それから25年後。私はシングルマザーとなった。息子は他県の大学へ入学し、仕送りの日々。大学は山間部にあり、バイト先もあまりないようで、月収の半分を送る月もあった。
息子は留年を繰り返し、7年かけてやっと卒業。最後の2年間、頭に来た私はもう仕送りもしなかった。
後年息子は、勉強したいことがあって大学へ行ったわけではない、と言った。私は長い間、ドブにお金を捨てていた気になったものだ。
それからさらに33年後。今度は息子の子どもが大学受験を迎える年頃になった。孫も大学に行きたいとは言っているが、何を勉強したいとか、どこの大学へ行きたいとかいうわけでもないらしい。
息子が働く会社はいつどうなるかわからない状態だし、その妻は体が丈夫でなく、仕事もきつくて不安定。でも、行きたいと言われれば行かせてやりたい親心だってわかる。だから祖母としても、無理しない程度に援助してあげたい気持ちはある。
と思いつつ、本当のところは自分自身のためにそれをしたかった。正直言って、子や孫に夢を託す気持ちはまったくない。できることならあの頃の私に援助してあげたい。