100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第73回は「私の記憶」のお話です。
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
どうでもいいことだけを覚えています
仕事で何度か訪れている土地にまた行くことになりました。
2、3度訪れているのに、その土地の景色が浮かびません。
訪れたのは2、3年前のはずなのに。
私の記憶はいつも肝心なことは忘れ、どうでもいいことだけを覚えています。
覚えているのは、宿泊した駅前のホテルの朝食バイキングでした。
朝食を取っているときにすれ違ったカップルの男性が持っていた、てんこ盛りのソーセージのお皿。
優に20本はあったかと思われるソーセージだけが乗ったお皿に目が釘付けになりました。
ん!?
一緒にいたマネージャーも心の声は同じでした。
「きっと彼女と食べるのよ」
「それにしても多くないか!?」
などと話し観察していると、カップルの彼女はそのソーセージを見ても何事もなかったように自分の取ってきた朝食を食べ始めました。
え!?
「普通彼氏があんな取り方したら何か言うよね?」
「びっくりしすぎて笑っちゃうかも」
「毎回あの山盛りなんじゃない?」
「どんだけ好きなんだ!?」
勝手なことを話しながらも、気になって仕方ない私達。