「騒音など、住民の苦情があるということは、不動産の価値が下がるということですよね。だから、あいつは苦情の元を消し去りたいんですよ」
「どうもまどろっこしい気がしますね。住民が声を上げるようになるまでは手間がかかるでしょう」
「手間がかかろうが、自分では手を汚したくないやつなんですよ。自分が苦情を言うのではなく、あくまで住民に言わせるわけです」
「なるほど……」
「……で、あいつが宗教法人ブローカーとつるんでいるというのは確かなんですか?」
 阿岐本はかぶりを振った。
「いや、まだ確証はありません。しかし、神社や寺に近づこうとしてるのは明らかじゃないですか」
「氏子総代に、檀家総代ですね」
「はい。ここに来る前に、大木神主にも話を聞いてきたんですが、大木さんも、原磯から宗教法人の売り買いの話は聞いたことがないとおっしゃっていました」
「大木はうかつだからなあ……。話を持ちかけられたら、うっかり売っちまうかもしれないなあ……」
 これは本気の発言だろうか。日村はそんなことを思った。
 田代住職が続けて言う。
「わかりました。それとなく、探ってみましょう」
 阿岐本がうなずいた。
「そいつは助かります」