義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。


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「あ? 日村さん? ええ、だいじょうぶですよ。ちょうど暇な時間です」
 電話をしたら、田代住職がそう言った。日村は尋ねた。
「追放運動の人たちは……?」
「ああ、いませんよ。日曜日だし」
 やはり土曜日は半ドン、日曜日は休みらしい。
 住民運動とかは、仕事が休みの土日祝祭日にやるものだと思っていたが、そうでもないらしい。
 阿岐本が言うように、土日は追放運動よりも優先すべき用事があるのかもしれない。
 日村は言った。
「では今から代表といっしょにうかがいます」
「あ、親分さんもいっしょなんだ。お待ちしていますよ」
 すぐに西量寺に出かけた。
 車を降りて山門をくぐると、そこに田代住職がいた。
 阿岐本が言った。
「わざわざお出迎えとは恐縮です」
「様子を見にきたんですよ。追放運動の連中や警察がいないかと思って……」