無人島の塩

昔の自分がスケールになっている写真で恐縮だが、図5-5を見てほしい。オーストラリア北西部の小さな無人島デキソン島(Dixon Island)に行ったときのものだ。池に氷が張っているように見えるのが岩塩である。これは海が大荒れのときに海水が海岸の岩の凹みに流れ込み、それが蒸発したものである。まさに、小学校理科の蒸発皿実験の天然版だ。

(図5-5)西オーストラリアの無人島デキソン島の塩

一般に、蒸発岩が形成される条件として、
1)河川からの淡水の供給が限られている
2)外洋との接続が限られている
3)気候が異常に乾燥している
の三つが挙げられる(Press, F. and Siever, R. “Understanding Earth”, 3rd ed.)。

このデキソン島の天然蒸発皿はちっぽけであるが、わずかとはいえ、海水からナトリウムイオンを取り除いている。極端な表現をすれば、これがもっと大規模に起こった例が図5 -4に示した岩塩だ。このなかで、地球史上、わりと最近の例は、地中海の干上がりである。

 

 『日本列島はすごい――水・森林・黄金を生んだ大地』(著:伊藤孝/中公新書)