(写真提供:Photo AC)
大小1万4000余の島々からなる日本列島。ユーラシア大陸から「独立」するまでの過程や、鉄や黄金などの列島がもつ資源についてなど、地学教育の第一人者である伊藤孝氏が解説した『日本列島はすごい』(中公新書)より、日本列島史の一部をご紹介します。今回は、岩塩について。岩塩ができる仕組みと、形成されやすい地形の特徴とは――。

岩塩は蒸発岩の一つ

世界の半分以上の人たちは岩塩を食しているらしい。日本でも食にこだわりのある方は、いろいろな岩塩を使い分けているかもしれない。

岩塩とは、いってみれば、塩でできた地層である。地質図Naviをいくら目をこらして眺めてみても、塩の地層は出てこない。日本列島にはないのだ。

泥岩、砂岩、レキ岩など、陸が削られてできた粒子が海のなかで溜まってできたのが一般的な堆積岩である。実は、まったく異なるできかたの堆積岩もある。水のなかに溶けていた物質が、析出・沈殿して形成されたものだ。通常は、水が蒸発・濃縮して、溶解度を超えた鉱物が析出・沈殿していくので、蒸発岩と総称されている。

蒸発岩に含まれる鉱物は、岩塩(NaCl)、石膏(CaSO4・2H2O)、方解石(CaCO3)などが代表的なものであり、実に多様である。現在の組成の海水が蒸発した場合、量的にもっとも多く析出・沈殿するのは岩塩だ。本稿では、とくにナトリウムのゆくえに着目しているので、蒸発岩に含まれる鉱物のうち、この岩塩に絞って考えてみる。

図5-4には世界のおもな岩塩の産地を挙げてみた。皆さんのお気に入りの岩塩の産地は含まれているだろうか。図中、岩塩が堆積した地質時代名が併記されており、様々な時代に岩塩が作られていることがわかる。

(図5-4)世界の岩塩(Tucker, M. E.“ Sedimentary petrology : an introduction”<Oxford :Blackwell Scientific, 1981>より引用し、一部修正)