市販薬、漢方薬、トクホをせっせと飲んで

そういえば、倒れる1~2ヵ月ほど前から、時折、動悸がして、息苦しいと感じることがありました。とはいえ少し休めば治まったし、「動悸」や「息苦しさ」をインターネットで検索したら、「更年期障害」という結果がヒット。自分の年齢を考えても、更年期の症状か、なら仕方ないと、勝手に思い込んでしまったのです。

ちょうどその頃、生理の経血量が減ってきて、そろそろ終わりが近づいているなという実感もあった。それに私の母は更年期の症状がかなりつらかったらしく、「大変やで~」と以前から言われていたのもあって、48、49歳頃から「そろそろ来る」と身構えていました。だから、「これは更年期の症状!」と、はなから決めつけてしまったんですね。

もうひとつ、動悸を感じる前から、むくみも気になっていました。マッサージに行くと、いつも「むくみやすいですね」と言われて。でもそれも、職業柄座りっぱなしで原稿を書いているのだから仕方がないと思っていました。今考えると、このむくみこそが心不全の兆候だったのに……。

おまけに、血圧も高かった。40歳になった頃、風邪か何かで病院に行ったら「血圧が高い」と指摘されたことがありました。でも、自覚症状がないので、「高い」と言われても日常生活にはまったく支障がなかったんですよ。一応、血圧計は買いましたが、「まだ若いから、そんなに気にしなくてもいいでしょ」と1、2回測ったきりで、ずっと放置していた。(笑)

結局、どの症状に関しても、「病気」ではなく、単なる「不調」だと思い込み、病院には一度も行きませんでした。動悸に関しては、更年期障害の症状を和らげるという触れ込みの市販薬を飲み、むくみには市販の漢方薬や特定保健用食品の胡麻麦茶を箱買いしてせっせと飲んだりして。また、足がむくんでいるときは、夜寝るときに着圧ソックスをはいてやり過ごしていたのです。

病院に行かなかったもうひとつの理由は、私の家系は元気で長生きしている人が多いから病気にはなりにくい、という過信ですね。94歳で亡くなった祖母も、生前、大病をして入院したことはなかったし、親戚もみな長命で、病弱な人間がひとりもいない。

それで「自分は死ぬまで入院などすることはないだろう」と、何の根拠もなく思い込んでいました。今思えば、あれもこれも勘違いのオンパレード。我ながら、「バカじゃないの?」と本当に呆れちゃいます。

健康診断は30代の半ばに受けたきり。2010年に作家デビューしてからは、一度も受けたことがありません。とはいえ、やはり動悸のことは倒れる前から気になっていたので、仕事が一段落したら病院に行ってみようと、近所の循環器内科の場所は調べていたのです。だけど、ついつい仕事の予定を優先し、結局、後回しになってしまっていました。