「救急車の中でも、あまりの苦しさにじっとしていられず、『このまま死ぬかも』という恐怖にかられながら、ずっと救急隊員の方にしがみついていたのです」
51歳のときに突然倒れ、緊急入院した顛末を綴った『シニカケ日記』が話題の花房観音さん。「危うく死にかけた!」という体験をすることになったのは、少し前から感じていた体の不調を《年のせい》だと軽く捉えていたからだと話します(構成:内山靖子)

「119」の番号すら頭に浮かんでこない

外出先で突然倒れ、息も絶え絶えの状態で救急車に乗せられて緊急入院。そんな恐ろしい事態に見舞われたのは2022年5月のある日、私が51歳のときでした。

その日は昼から外出。新刊の出版イベントが控えており、人前に出るからと、サロンでまつげのエクステの施術を受け、ついでに以前から通っていた、シモの毛を処理する「シュガーリング脱毛」のサロンにも寄って、あそこの毛をつるんつるんにしてもらったりしていました。

実は、このサロンにいたときから少ししんどかったんです。ドキドキと動悸がして呼吸がしにくい。とにかく早く家に帰ろうと、サロンを出て急いでバスに乗車。ところが、あまりにも息苦しくて立っていられないのです。このままバスの中で倒れたらマズい、と途中のバス停でなんとか降りたものの、そのままベンチによろよろと座り込んでしまいました。

そのときはすでに意識が朦朧として、周りの人が「救急車を呼びましょうか?」と声をかけてくれたのですが、無言でうなずくことしかできなくて……。救急車を呼ぶ「119」という番号すら頭に浮かんでこない状態でした。

救急車の中でも、あまりの苦しさにじっとしていられず、「このまま死ぬかも」という恐怖にかられながら、ずっと救急隊員の方にしがみついていたのです。

そのまま病院に運ばれ、服や下着を脱がされて手術着のようなものに着替えさせられたとき、「このおばさん、なんでシモの毛をきれいにしてんねん」と、看護師さんに苦笑されるかもという一抹の不安が頭をよぎったものの(笑)、気を失いかけたりして、それどころではありませんでした。

酸素マスクを着けられ、さまざまな検査をした後、お医者さんから「心不全ですね。心臓が正常に機能していないので、1~2週間の入院になります」と告げられました。「心不全?それって大ごとなんだけど!」と、思いもよらぬ病名に困惑したまま、ICU(集中治療室)に運ばれていったのです。