私が先に逝くはずだったのに

私よりも先に妻は死んでしまった。

私が先に逝くはずだったのに、現実は逆だった。

(写真:『妻より長生きしてしまいまして。金はないが暇はある、老人ひとり愉快に暮らす』より)

そして、妻が先に死んだからといって、冒頭に書いたようにはならなかった。

なぜならなかったのだ?

自由を手に入れ、ひとり暮らしを満喫し、新しい彼女でもつくって、優雅に海外にでも遊びにいけばいい。なぜそうしない。

現実は、未だ喪失(そうしつ)感に苛(さいな)まれ、ただ無為(むい)に4年の時を過ごしただけ。

LINEに友人からメールが来ても、既読スルー。キャバクラのお姉ちゃんはブロックした。五十肩でお姫様抱っこなんか到底無理! ひとりでは焼肉屋にすら入れない。

パーティーどころか、今日もせっせと自炊して、ひとりで侘びしく「金麦」を飲むだけ。それが現実だ。