情けないのは男

『婦人公論』(中央公論新社)という雑誌に「読者体験手記」というコーナーがある。

そのコーナーで、76歳の女性の手記が掲載されていた。

その手記のタイトルは、

「夫が先に逝ったなら、やっと私の人生がきたと叫びたい」。

その手記がたいへん面白かった。

夫が先に死んだ場合と妻が先に死んだ場合とでは、こうも違うものなのかと正直驚いた。

あまりにも自分の場合とは違う。それで冒頭のようなことを書いてみたのだ。

妻は夫の死後、自分の人生を楽しむべくいきいきと暮らしていくけど、しかし妻に先立たれた夫はそうはいかない。そのいいサンプルが私だ。

つくづく男はダメな生き物だと、あらためて思う。

夫婦だって人間だ。

たまには「死んでしまえ」と思うこともあるだろう。しかし、死んでしまってはもう喧嘩もできない。

たとえどんな夫婦だろうが、長年一緒に人生を歩いてきたパートナーが死ぬということは、言葉にできないほどの喪失感であり、耐え難いものだ。

この記事を読んでいるあなたに、今気づいてほしい。

あなたの夫が、あるいは妻が、恋人が、もしも元気で生きてくれているなら、あなたはそれだけで幸せ者だということを。

しかし、そのことになかなか気づけないのも人間ではあるが……。

今日も夫婦で一緒に飯が食える。

ひとり残されると、そんななんでもない日常のことばかりが思い出されて仕方がない。あれが幸せだったんだと、死なれてから気づく。

いつかあなたもそう思う日がきっとくる。だから今は、お互いを大切にしてほしい。

そして、ふたりで「退屈だね」と言いながら、長い老後を過ごしてほしい。

※本稿は、『妻より長生きしてしまいまして。金はないが暇はある、老人ひとり愉快に暮らす』(大和書房)の一部を再編集したものです。


妻より長生きしてしまいまして。金はないが暇はある、老人ひとり愉快に暮らす』(著:ぺこりーの/大和書房)

動画「ようやく妻が死んでくれた」が853万回再生超え。「これは泣ける……」「夫婦のありがたみを実感」と反響続々のチャンネルがついに書籍化!妻を失った悲しみに折り合いをつけながら、料理や洗濯などの家事を楽しみ、あり余った時間をお金をかけずに楽しむ方法を見出す、丁寧な暮らしを綴ったエッセイ本。老後の男性の、ひとり暮らしの楽しみ方が見えてくる1冊!