臓器とツボは「経絡」で結ばれている

そして、最も重要なことは、ツボの多くは経絡上にあり、それぞれが特定の部位や臓器と結ばれているという考え方です。

例えば、手の太陰肺経(たいいんはいけい)と呼ばれる経絡は、体内では胃から始まり、大腸や肺などを経由しているとされています。さらに体表では、脇の近くにある中府(ちゅうふ)と呼ばれるツボから始まり、腕の内側にあるいくつかのツボを経由して、親指の先にある少商(しょうしょう)と呼ばれるツボで終わります(図)。

【図】手の太陰肺経

この経絡上にあるすべてのツボは、経絡でつながっている肩や腕や手の痛み、また胃や肺、大腸などの症状改善に効果があるとされているのです。

実は、西洋医学の「神経」ということばは、「神気(=精神)」と「経脈」を合わせたもので、江戸時代に『解体新書』が翻訳されたときにつくられた造語です。

ところが、この「神経」の語源となった経絡(経脈・絡脈)の存在を示す確かな証拠はまだ見つかっていません。ただ、ツボと体の部位や内臓を結ぶ経絡の考え方は、主に神経を介したネットワークによって説明できることが次第に明らかになってきています。

※本稿は、『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』(講談社)の一部を再編集したものです。


東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』(著:山本高穂、大野智/講談社ブルーバックス)

私たちの生活に身近なツボ・鍼灸・漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。

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