なぜ米軍で鍼治療を行っているのか
この方法で使う鍼は日本や中国の鍼とは違い、長さ3ミリメートルと短く、鍼の先端は“矢じり”のような形をしていて1ミリメートルほどの太さがあります。刺した後も数日間そのままにしておくと言い、その見た目は、まるでピアスをしているような感じです。
取材では、腰痛に悩む補給隊員の治療に立ち会いましたが、両耳にそれぞれ数本の鍼を刺しただけで痛みが大幅に軽減したと話していました。
それにしても、なぜ米軍で鍼治療を行うのでしょうか。
ニエムゾー博士によると、戦場でのケガや疾患による痛みを素早く簡単に処置するために、鎮痛薬以外の治療の選択肢として鍼治療に注目したと言います。
さらに、手足の裾をまくったり、服を脱いだりする必要がない耳のツボを使えば迅速に治療が行えると考え、それまで効果があるとされていた多数の耳ツボの中から5つを選び出したそうです。
彼らが行った治療メカニズムの研究では、この5つのツボに鍼を刺すと脳の血流が増加することが確認され、耳ツボへの鍼刺激によって脳の痛み感覚を調節している可能性があると言います。現在、BFAは米軍以外でも広がっており、鎮痛だけでなく精神疾患などの治療に応用する研究も進められています。