自宅は、結婚の際に購入した分譲団地。介護しやすいよう改装することに決めた。
「24時間介護となるため、まず考えたのは、部屋を《病室》にするということ。訪問看護師や理学療法士など、朝から晩まで人の出入りがあるので、壁を取り払って広くしたリビングの真ん中に医療用ベッドや吸引装置を置きました。夫が咳き込んだら、すぐに手当てしなければならない。私のベッドは、押し入れを取り払った場所に置き、横になっても夫の顔が見えるようにしました」
リフォーム工事は、ケアマネジャーや業者と相談しながら進めた。タンスや大きな家具を処分して作りつけの壁面収納に。さらに段差を解消し、バリアフリーを実現した。車椅子移動のために、トイレ、洗面所、脱衣所の壁をなくし、便座の向きも90度回転させた。
ほかにも不要なものは処分。もともと夫の研究のため韓国やアメリカへ引っ越すたびに、持ち物は減らしてきた。
「自宅介護は大変でした。でも、たとえば尿瓶代わりにペットボトルを利用するとか、夫も私もラクになるよう、自分で考えて工夫するのが日々の張り合いになっていた気がします。夫は、ここで6年半過ごして亡くなりました」
介護、医療、リハビリで支えてくれた専門家たちには感謝してもしきれない、と服部さん。
「思い返せば悲しいこともつらいこともいっぱいありました。でも、何よりありがたかったのは、夫が笑顔でいてくれたこと。いまは、私ができることはやり尽くしたという気持ちです」