二間の壁をなくして広いリビングにした服部さん。介護リフォームの工夫を笑顔で語る

快適なシングル住まい

そんな彼女を支えていたのは、音楽への情熱だ。大阪音楽大学を出てプロの声楽家になった服部さんは、子育てや海外生活の間にも研鑽を重ね、リサイタルを開くなどソプラノ歌手として活動を続けてきた。リビングの隣に作った防音室がレッスンの場。夫の介護中も、ベッドの様子が見えるカメラをグランドピアノの上に置いて練習した。

最近、服部さんは新たな挑戦を始めたところだ。今年11月に開催予定の、男声合唱コンサートの準備に取りかかっている。そもそもの始まりは15年前。

「三男の同級生のお母さんが公民館の館長さんで、『リタイアして家にいる男性陣を外へ引っ張りだすために何かしてくれない?』と頼まれて。それで未経験のおじさま20名ばかりを集めて、合唱団を結成したんです」

服部さんの確かな指導もあって、メンバーは40名ほどに倍増し、地域では知る人ぞ知る合唱団へ成長した。そしてメンバーの働きかけにより、結成15周年コンサートをすることになったという。現在、服部さんは顧問となり、歌のレッスンのほか、一部指導もしている。

「みなさん熱心なのはいいのですが、『曲をそれぞれの言語で歌いたい』とおっしゃって。ドイツ語、ロシア語、英語、フィンランド語、日本語の歌詞の楽譜を取り寄せたり、歌いやすいように書き直したり。私ったら病み上がりなのにもう……能天気ですねえ」と苦笑い。

じつは68歳で舌白板症(口腔内の角化性病変)、翌年に脳梗塞、その翌年に乳がん、さらに72歳で褐色細胞腫(副腎髄質から発症する腫瘍)と、立て続けに病気に見舞われてきた。

パソコンでメールをチェック。CDや写真も整理