役者魂みたいなものはないのかネ

彼は絵描きになろうとしたのか、その種の学校を出、結果役者ンなった。で故金原亭馬生師の娘を女房にした。池波志乃である。

他は知らない。家元仲間の内容というか、その種のことはほとんど知らナイ。ついでに自慢しておくと、家元他人に嫉妬を焼かない。罵倒はするが、嫉妬はない。

日活の青春スタァから、現在の役どころ、ま、たいがい悪役でドスのきいた声を出して悪役のパターンを演っているだけだろうから彼の映画なんざあ見たこともない。

その中年の悪役がこの処やたらとTVに出てる。一度つき合ったが周囲があまりにも馬鹿なので呆れ返って一度でやめた。

「よく、ああいう番組に平気で出てるネ。了見が判ンねぇ、役者魂みたいなものはないのかネ」

「ないネ」

「金だけかネ」

「そんなとこだネ」

「映画は?」

「ないネ」

「……はあ……ないのか、なきゃ仕様がねぇ、絵にもないのか」

「あるネ」

「絵にはあるんだ」

「あるよ」

だとサ。別に照れていってる訳でもあるまい、周恩来の弁だから信じよう……。