『芸談-談志百選』より。画:山藤章二
俳優の中尾彬さんが2024年5月16日、心不全のため亡くなりました。享年81歳。大学在学中に日活ニューフェイスとしてデビューした中尾さんは、数々の映画やドラマに出演すると同時に、バラエティ番組でも活躍。池波志乃さんとは「おしどり夫婦」としてよく知られていました。その中尾さんと生前に交流されていた一人が落語家・立川談志さんです。談志さんいわく、中尾さんが銀座のバーにふらっと入ってくると”会談”が始まるそうで――。談志さんの著書『芸談-談志百選』よりお二人のやりとりを紹介します。

中尾彬は“周恩来”で自分は“毛沢東”

われわれの仲間……ったって別にどうという程の奴ァ居ない。けどそこそこの奴ァ居る。“どっちなんだい”といわれりゃ、後のほうだ……。

で、中尾彬はその中の周恩来である。勿論、毛沢東は家元。

毒蝮三太夫が「俺はなんだい?」に、

「お前は朱徳」

「……?……そうか、俺は稼ぎがいいからか」

あ奴にゃ、「朱徳」も、「所得」も判別(わか)らない。

この役どころは仲間内で決めたのではない、家元が勝手にきめ、中尾がOKしただけだ。