備前焼に挑戦

谷村君とはたくさんの時間を共有したよ。たくさんの感情も共有した。陶芸を教えてもらったのもいい思い出だ。

『俺は100歳まで生きると決めた』(著:加山雄三/新潮社)

彼が遊びに来たとき、うちにある花瓶をしげしげと眺めているんだよ。いただきものの花瓶だった。

「この花瓶、すごいですよ」

谷村君が言ったんだ。でも、そのときの俺は花瓶の良し悪しなんて、さっぱり理解できない。

「そんなにいいものなの?」

彼の目利きに感心して聞いた。

「これは見事な備前焼です」
「なんでわかるんだ?」
「僕、備前焼をやっているんです」
「どこで?」
「岡山にいる先生のところです」
「ええー、俺も連れて行ってくれよ」

興味をそそられて備前まで出かけていった。俺はなんでも自分でやってみないと気が済まない性分だからね。

陶芸では先輩の谷村君と一緒に土をこねて、焼いて。素朴な陶土を窯で焼くと、見事な仕上がりになる。最初は、そりゃあ、苦労したよ。ところが、自分でもびっくりするくらい、ちゃんとできるようになったんだ。買ってくれる人までいるんで驚いた。