昭和という時代に一生懸命働く親の姿を見ていた

趣味の車の他に、古いゴルフクラブも集めています。1950年から1990年末ぐらいまでの50年弱ぐらいの間のクラブたちを集めて、それを使ってプレーするのが、今一番熱中していること。世の中的には価値はないといわれている古いクラブでも、僕の中では価値があるんです。機械が作った現代クラブではなく、僕が集めているのはひとつずつを年月や手間暇をかけて、職人が手作りしていた時代のもの。なので、道具である前に、作品なんですよ。

古いものを大事にするのは、僕が昭和という時代に生まれ育ったことも関係していると思いますね。昭和・平成・令和と時代は続いていますが、昭和の日本の活気あふれる高度成長期の時に生まれ、バブルが弾けた後にデビューして。そんな時代の変遷を直で体感している世代だからか、ひとつひとつのクラブには情熱がこもっている気がするんです。

元の持ち主を想像すると、おそらく僕の親父か、おじいさんたちの世代だと思います。例えば、高度成長期の中で一生懸命働いて、家族を養いながらちょっとずつ自分のお金も貯めて、ようやく買ったクラブかもしれない。もしくは、会社の上司たちとラウンドすることになって頑張って買ったのかも。

それを、令和の時代に僕みたいな奴が使っても、なんか喜んでくれている気がするんですよね。きっと、僕がこうして会ったこともないクラブの所有者やご家族のことを考えられるのは、自分の親を見てきたからだと思うんです。僕の両親は共働きだったので、朝から晩までずっと働いていました。

子どもの面倒を見たくても見られないぐらい働いていた記憶があって、今の時代とはちょっと違いますよね。今回の舞台のストーリーにも出てくるんですが、職場の上の人たちにはなるべく休んでもらわないと下が休めないとか、適度に休んでもらわないと逆に会社が困るのが、今の時代。僕は、日本人は働きすぎだと言われていた昭和時代の親の姿を見て育っているので、手に入れたクラブを見て、持ち主だった人の背景まで想像してしまうのかもしれません。

SOPHIA・松岡充
(撮影◎本社 奥西義和)