(撮影◎本社 奥西義和)
2024年、ボーカルを務めるロックバンド「SOPHIA」は結成30周年、自身の舞台俳優としての活動は20年目を迎えた、松岡充。音楽活動はもちろん、役者としても一目置かれるなか、舞台『Change the World』で主演を務める。2020年に『サイレント・トーキョー』のタイトルで映画化された秦建日子(はたたけひこ)の小説『And so this is Xmas』の続編として、秦が2023年に発表した同名小説を原作に自ら脚本を書き下ろしての舞台化となる社会派ミステリーだ。節目に挑む舞台、そして趣味や家族のことまで、じっくり語ってもらった(構成◎かわむらあみり 撮影◎本社 奥西義和)

代表作になるぐらい本気で舞台に挑む

舞台『Change the World』は、SOPHIAが結成30周年のアニバーサリーイヤーを迎えている最中の公演です。当初、このお話を含めてバンド活動に集中するため、舞台作品には参加しない予定でした。しかし、秦先生の原作を読ませていただいたら、これは大作だと実感して。その後、プロデューサーや秦先生、演出家の橋本昭博さんともお会いしたんです。

秦先生が僕にオファーしてくれたのは、バンド結成30周年のフラッグとして創り、後に舞台のテーマソングにもなった楽曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」を聴いてくださったことがきっかけ。

SOPHIAは2013年に活動休止をして、2022年に復活しました。理由はメンバーの都合でした。当初は2~3年で再開するつもりだったけど、コロナ禍も重なって9年もかかってしまった。復活してまずは、ファンに「ごめんね、今まで待っててくれてありがとう」という感謝を伝えるために、できる限りライブを行いました。その期間を終え、今後僕らが向かう先を示す“旗”として発表したのが、「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」です。これはSOPHIAのメンバーだけでなく、コロナ禍を経た世の中への想いも歌詞に込めました。

今あなたが感じている憂鬱は、大したものではないかもしれないけれど、一人一人の憂鬱が重なって、世界中を覆う雲になっているように感じます。個人が抱く小さな憂鬱を取り除くことができれば、その連鎖で世界は晴れるのではないかと。

そんな僕の想いが、今回の作品で伝えたいメッセージと同じだと、秦先生はおっしゃってくださったことも本当に嬉しかったです。僕自身、音楽で表現したい想いと舞台のテーマが似ていると感じたこともあり、出演を決めました。

どんな活動でも、携わるアーティストやキャスト、スタッフのみんなが同じ情熱と能力と時間を傾けたほうがいいと思っているんです。例えば原作者、プロデューサー、演出家、僕、共演者が同じ熱量で取り組まないと、人を感動させる作品にはならない。なので、オファーをいただいたら、「なぜ僕なのか?」と必ず聞く様にしています。そういう意味で僕は面倒くさい奴なんですよ(苦笑)。でも、お話しする中で、コラボレーションによって自分が思った以上のものができるかも、とお互いが思えればいい。そこがお話を受けるかどうか、一番重きを置いているポイントなんです。今回は、最初に制作チームのみなさんと話した時にいいものが生まれる予感がしたので、僕の代表作になるぐらい本気で取り込もうと決意しました。