作家・エッセイストの阿川佐和子さん(左)と詩人の伊藤比呂美さん(右)(撮影:岸隆子)
3月23日、東京・東銀座で開催された「婦人公論ff倶楽部」オープン記念トークイベント。第1部には、本誌でも人気の阿川佐和子さんと伊藤比呂美さんが登壇しました。おふたりが考える、老いや孤独と向き合いながら人生後半を楽しむ方法とは――(構成:田中有 撮影:岸隆子)

<前編よりつづく

ショックなこともすぐに忘れる

伊藤 ここ何年も、美容院で鏡を見ると「母だわ」って思うんですよ。美容院の鏡って特別に意地悪く作ってあるのかしら。

阿川 そうそう。バスルームって暗いから、鏡で見てまぁまぁかなと思って、でも日の当たる窓辺で見るとびっくりしちゃう。こーんなババァだったかって。

伊藤 すごいでしょ。孫ができたとき、抱いた自分の手がね、シワシワで「母の手だ」って思ったの。自分の手だってわかってても、この手は母? 私は誰? みたいな感じで面白かった。

阿川 私、インタビューの仕事で若い女優さんやアイドルに2時間くらい、ずっと顔を見ながら話を聞くんです。その間、その人の動きや表情が私の脳にインプットされて、終わってぱっと鏡を見ると私の顔が映っている。すると、脳が「これは皮膚ではありません! 象です!」って叫ぶんですよ。皮膚というものはツヤツヤ、ピカピカしてるはずなのにって。すごいショック受ける。

伊藤 え、ショックですか? われわれはこれからずっと年をとるから、ショックを受け続ける……。