「自分がおじいちゃんになってお芝居をしている姿が、まったく思い浮かばない」(神木さん)撮影:小林ばく

裏方の仕事にも興味が湧いて

役者をしていると、運命的な出会いがあります。僕自身のターニングポイントになった作品を挙げるとすれば、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)。映画を撮影した時は現役の高校3年生、公開は高校を卒業した後という、学生と社会人の狭間にあった作品なんです。

僕が演じたのは、映画部の男子生徒。実際に演じていた時は、「おまえ、将来何になりたいの」「映画監督かなあ」「でも、無理だよ」――という何気ない掛け合いも、単に役として喋っていたんですね。

ところが高校を卒業して完成した映画を観たら、「高校を卒業したら、どうするんだ。しっかりしなきゃいけないぞ」と、学生という鎧を失った今の自分に言われているような気がして。まさか自分のセリフに、これからの人生を問われるとは思いませんでした。将来を真剣に考えるきっかけを作ってくれた大切な作品です。

ありがたいことに、それから今まで本当にたくさんの作品に出させていただきました。でも、10年後も役者を続けているかというと正直わからない。やめているかもしれないです。お芝居や作品を通してみなさんに楽しんでいただきたいという思いは変わりませんが、なにせ厳しい世界ですから。

最近は「自分の中で一番想像できる未来って何だろう?」と考えるようになりました。昔は「一生役者をやっていく」と言っていたのに、自分がおじいちゃんになってお芝居をしている姿が、まったく思い浮かばない(笑)。逆に、表舞台に立つのではなく裏方で何かを作ったり、企画したり、人を育てたりしている姿のほうがイメージできるんです。

僕がそんな気持ちになったのも、現場でプロデューサーや監督、音声さんなどスタッフのみなさんが働く姿を見ているから。たまたまひとつの作品でチームになっただけで、僕らとは生きている世界が全然違います。

役者にもいろんな可能性があるけど、ほかの職種に目を向けてみると、世界はもっと広いんだなあと思ってしまう。「すごいな」とか「楽しそうだな」と思える素敵な人に出会うたびに、彼らの仕事への興味が増していくんです。役者を続けながら、作り手側も経験してみたいですね。