親の願いは子が自ら人生を切り拓くこと

ただし自力ではどうにもならず、夫婦仲も険悪になって離婚となれば、娘は他人からまた身内に戻るのですから、「帰っていらっしゃい」と迎えるにやぶさかではありません。お金もなく、仕事や住まいを探さなければならないのなら、親ができる範囲で、自立のための援助をしてあげるのもよいでしょう。娘が離婚するのは世間体が悪い、離婚を避けるためには援助したほうがよいと考える方もいるかもしれませんが、今の時代、離婚は珍しくなく、悪いことでもありません。親の価値観を押しつけないことが大事です。

また、ある程度お金がある家庭なら、離婚するまで何も手助けしないなんて、親として冷たいと思うかもしれませんね。でもAのように立て替えていたら、「親は助けてくれるものだ」と、甘える心が出てくるはずです。親のお金は親のもの。子どもがあてにしてはいけません。親の願いは子どもの幸せであり、それは何かといえば、子どもが自ら人生を切り拓くこと。いつまでも親に依存しているのは不幸です。「借金がかさんだら破産しても仕方ない。苦労するのも人生。安易に親に頼ればいいと思ってはいけない」という厳しさを教えることこそ、親の愛です。

たとえ借金の額が小額でも出してはいけません。なぜなら、娘の夫がろくでもない男だとしたら、今後も借金が膨らむ可能性大だから。立て替えたお金は無駄銭になります。一方で、娘夫婦がちゃんと返済計画を立てやりくりできていて、夫婦仲もいいのなら、親がしゃしゃり出ないこと。かわいそうと思わず、放っておきましょう。

 

(イラスト◎大野舞)